木質ボードとは、木材を細かくしたものに接着剤を加え、圧縮成形した板状の製品の総称です。
個体差のある木材を一旦分解して再構成するため、反りやねじれといった方向性の欠点が少なく、品質ばらつきの小さいことが特長です。また、製材端材、小径木、各種廃材など、由来の様々な木材を余すことなく利用できるため、環境に配慮したエコな材料としても評価されています。
日本で木質ボードの利用が始まったのは昭和初期と言われています。当時は欧米からの輸入製品に頼っていましたが、昭和20年代後半には多くの国内企業が製造を手掛けるようになりました。
国内企業の生産技術が進歩し、安価で供給でき始めると、多くの用途に使われるようになり、日本の戦後復興と高度成長に大きく貢献しました。
木質ボードには、製法と特性の異なる様々な種類があります。その特性を生かし、家具、建築材、産業資材など幅広い領域、用途で利用されています。
ここでは、代表的な木質ボードである、MDF、インシュレーションボード、ハードボード、パーティクルボード、OSBの5種類を紹介します。
MDFは木材の繊維 (ファイバー)に接着剤を塗布して成形したマットを、高温圧縮して製造します。繊維は小さく細かいため、板面、木口面ともに緻密です。製品密度の範囲は「0.35g/c㎥以上」です。
•加工性:化粧性や木口の曲面切削加工に優れます。
•耐久性:繊維を接着剤が覆い、耐久性が高く長期的に利用できます。
•用途例:家具、内装・構造等建築材。
•参考情報:JIS A 5905 (繊維板)
インシュレーションボードは接着剤を含む溶液に浸した繊維を紙漉きの要領で水分を絞り、高温で乾燥して製造します。製品密度範囲は「0.35g/c㎥未満」と比較的軽量です。
•作業性:非常に軽量で切断加工が容易です。
•断熱性:内部に空気を多く含み、断熱性に優れます。
•用途例:畳、断熱材、養生板。
•参考情報:JIS A 5905 (繊維板)
ハードボードは接着剤を含む溶液に浸した繊維を紙漉きの要領で水分を絞り、高温圧縮して製造されます。製品密度範囲は「0.80g/c㎥以上」です。
•高強度:密度が高く、曲げ強さに優れます。
•高硬度:硬く、打抜き加工に適します。
•用途例:梱包、養生板。
•参考情報:JIS A 5905 (繊維板)
パーティクルボードは木材の小片(パーティクル)に接着剤を加えてマット状にし、高温圧縮して製造します。木材を砕いて作るため、小片のサイズは繊維より大きいです。製品密度範囲は「0.40g/c㎥以上0.90g/c㎥以下」です。
•安価:流通量が多く安価であり、様々な材料の代替品として検討できます。
•加工性:切断等の加工が簡単にできます。
•用途例:家具、木工、建築下地。
•参考情報:JIS A 5908(パーティクルボード)
OSBは木材の削片(ストランド)に接着剤を塗布したものを互いに直交する方向で配置し、高温圧縮して製造します。木材を削って作る削片のサイズは、小片より大きいです。日本では北米や欧州の製品が多く流通します。
•高強度:曲げ強さやせん断強度に優れます。
•意匠性:木材の風合いを外観に残しています。
•用途例:建築下地、意匠材。
•参考情報:・JIS A 5908(パーティクルボード)
内24-10タイプ(配向性ストランドボード)
・構造用パネルの日本農林規格
2021年に官民協議会「民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッドチェンジ協議会)」が立ち上がり、民間建築物等における木材利用が後押される環境が整った結果、非住宅建築物の木造化が加速しています。
木造化には端材の発生が伴いますが、その量は今後増加します。発電燃料として燃焼し二酸化炭素を発生させるのではなく、木質ボードは耐久消費財の一部として端材を有効利用ができます。その受け皿となるには、用途と領域をこれまで以上に広げる必要があります。
中でもMDFは緻密さと耐久性を兼ね備え、将来的に新たな用途展開が望めます。製材に比べ製品密度が高くかつ耐久性が高く、同じ体積でより多くの炭素量を長期固定できるため、カーボンニュートラルの観点からも優れた材料と言えます。
木質ボードは用途に応じた選択が可能です。環境に配慮された材料としての役割も果たしています。中でもMDFはその緻密さから加工精度が高く、また、耐久性にも優れることから今後も新しい用途への展開が期待できます。